
「スーパー・タイト」は、オーストラリア・メルボルンのRMITデザインハブ・ギャラリーにて、2019年7月から9月にかけて開催された展覧会である。塩崎研究室は、Graham Crist、John Doyleらと共にキュレーション・展示制作を行った。本展では、現代のわたし達の都市を「スーパー・タイト・シティ」として位置づけることを試みている。それは、都市の建築とインフラの超高密度な状況【過密空間】と、人々の親密度の高い生活上の工夫や営みに即した空間的設え【親密空間】の重なりが現在の都市をかたちづくっているものと捉え、その同時存在による都市を「スーパー・タイト・シティ」として再定義するものである。本展ではこれらの状況を整理し、過密空間、親密空間それぞれの事例をとりあげるとともに、その先に、「公/私」や「虚/実」といった重なりをもつ都市の状況を「オーバーラッピングシティ」として提案した。満員電車や花見といった日本のタイトな空間を記述した実寸大のドローイングや、覗き穴を通して鑑賞する映像、プロジェクターを用いた参加型ワークショップは、いずれも没入的に「スーパー・タイト・シティ」を体験できるものであり、文化的背景の異なる人々を想定した展示手法として有効なものであった。また、本プロジェクトで確立した、空間・人・ものを同時に描くドローイングのスタイルは、塩崎研究室における重要なテーマである「重なり」を記述する手法として、後の様々なプロジェクトに登場することとなる。(井出達也/4期)